骨粗しょう症

骨粗しょう症は骨が弱くなり骨折しやすくなる病気です。
転倒などの軽微な外力により骨折したり、気付かないうちに脊椎の圧迫骨折(いつのまにか骨折)により円背、身長低下などの姿勢の変形をきたします。
日本におよそ1,300万人の患者様がいると推計されており、高齢女性の2人に1人、高齢男性の5~6人に1人といわれています。  
骨粗しょう症による骨折は痛いだけでなく、生活の質や健康寿命、生命予後にも悪影響を及ぼします。
骨折や転倒は要介護、寝たきりの原因の代表であり、患者様のみでなくご家族の負担にもなることから、いかに骨折を予防するかは社会的にも重要な課題となっています。
骨粗しょう症の原因は?
骨粗しょう症の主な原因は加齢と閉経です。それに加えて、ステロイド薬や抗がん剤治療などの副作用による薬剤性骨粗しょう症や生活習慣病(糖尿病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患など)も骨粗しょう症のリスクになることが明らかになっています。
また、甲状腺や副腎、ビタミンD不足・欠乏などのホルモンバランスの異常による続発性骨粗しょう症もあり、適切な診断を行わなければ治療方針を誤る可能性もあります。
骨粗しょう症の診断方法は?
骨粗しょう症の治療は骨密度測定、エックス線撮影、骨折リスク評価により進めていくことになります。骨密度測定はどの方法でするのか、どの部位の検査をするかが重要です。
骨粗しょう症の予防と治療ガイドラインではDXA法を用いて腰(腰椎)、太もも付近(大腿骨)の骨密度を測定することが推奨されています。
手のエックス線や超音波による測定方法もありますが、骨粗しょう症の確定診断には用いられていません。
当院では、早期から正確に骨粗しょう症の診断、リスク評価を行うために、DXA法を用いて腰椎、大腿骨の骨密度測定を行っています。
当院の目指す骨粗しょう症診療
誰しもが骨折はしたくないものですが、骨折をして初めて骨粗しょう症と診断されるケースが多いのが現状です。
本当は骨折をする前の検査が重要なのですが、島根県では骨粗しょう症の検診率や受療率が低いことがネックになっていると考えられます。
なるべく早く骨粗しょう症を発見し、患者様の健康寿命と患者様ご家族の生活を守ることが私たちのミッションと考えています。

当院では骨粗しょう症学会認定医による骨粗しょう症検診(自費診療)を行っています。
また、当院では飲み薬だけでなく注射薬による治療を行うことが可能です。
①高齢者
②閉経後の女性
③骨折をしたことがある方
④ご家族が骨粗しょう症・骨折既往をお持ちの方
⑤生活習慣病のある方
⑥痩せている方
⑦若い頃に比べて身長が低下した方
⑧骨粗しょう症が気になる方
まずは検診を受けることをお勧めいたします。  

骨粗しょう症の領域においても医学の進歩は目覚ましく、新しい骨粗しょう症治療薬の開発が相次いでいます。
一方、適切な治療薬を適切な患者様に使用しなければ、副作用により逆に生活の質や生命予後を悪くする危険性があるため、専門的な知識が必要です。当院ではDXA法による骨密度測定に加えてエックス線撮影、質問票による将来の骨折リスク予測、骨代謝マーカーの測定などを用いて、専門医による質の高い骨粗しょう症診療を行っています。
患者様とご家族が活き活きと、いつまでも笑顔でいられるようにサポートさせていただきたいと考えています。

骨密度測定について
骨粗しょう症の検査において、骨密度測定はもっとも重要な検査です。
巷ではさまざまな方法で骨密度測定が行われていますが、どの方法で、どの部位の骨密度を測定するのか、質問をうけることが多くあります。

ガイドラインや診断基準では、骨密度測定はDXA法(二重エネルギーエックス線吸収測定法)による腰椎、大腿骨近位部の骨密度測定が原則とされています。
骨粗しょう症性骨折の中でも大腿骨近位部骨折と椎体骨折は生命予後に関わる重要な骨折であることからも、腰椎と大腿骨の骨密度測定を行うことがゴールドスタンダードとなっています。

国際臨床デンシトメトリー学会(ISCD: International Society for Clinical Densitometry)の公式見解では、測定部位について「すべての患者で腰椎と大腿骨を測定すること」とされています。
前腕骨(手首付近の骨)の測定は、大腿骨、腰椎の測定または評価が不能な患者、副甲状腺機能亢進症の患者、著明な肥満の患者(DXA法のテーブルに乗れないほど)に限定するとされています。
DXA法以外の骨密度測定法
1)MD法(microdensitometry)
エックス線撮影画像の濃淡や皮質骨の幅から骨密度を評価する方法であり、日本では第二中手骨を用いて評価します。
MD法は日本で大規模な検討はされていないものの、骨密度の診断に用いることは可能とされています。
しかし、骨粗しょう症治療効果判定に用いることは困難であり、治療経過のモニタリングには使用できません。

2)定量的超音波測定法(QUS)
持ち運びの容易さや簡便さから人間ドックや検診現場で汎用されています。超音波法は放射線を用いないため公共の場でもスクリーニングとして用いることはできますが、骨粗しょう症の確定診断には用いられていません。
骨の構造
骨は、骨髄と接する「海綿骨」とそれを取り囲んで存在する「皮質骨」からなります。
海綿骨では新陳代謝(骨代謝)が盛んにおこなわれていて、皮質骨の約10倍といわれています。
海綿骨と皮質骨の比率は部位によって異なり、末梢骨(前腕や足の骨)よりも躯幹骨(椎体、大腿骨近位部)の方が、海綿骨比率が大きい部位となります。





骨代謝が盛んな部位では骨密度の増減が大きいため、腰椎や大腿骨近位部が骨密度測定の対象として優れた部位ということになります。
同様に、薬剤による治療効果も骨代謝が盛んな部位で評価する必要があり、もっとも反応性がよい部位が腰椎です。
したがって、診断から治療経過の評価まで行うためには、腰椎か大腿骨の骨密度がもっとも優れた部位ということになります。
逆に、早期の骨粗しょう症の診断や治療効果判定に前腕の骨密度測定は限界があるということになります。

  海綿骨 皮質骨
部位 腰椎、大腿骨 橈骨(前腕の骨)
骨代謝 盛ん 盛んでない
骨密度 減りやすい 減りにくい
治療の反応性 よい よくない
骨粗しょう症まとめ動画